冬のドイツ、春の大阪に続いての出張工場見学、今回はプライベートの旅行もかねて、長野県松本市にある藤原印刷へ伺いました。8月27日、新宿からスーパーあずさで降り立った松本駅の温度計は午前中に36℃。残暑の長野、とつぶやけば虚ろな響き。

藤原印刷株式会社 http://fujiwara-i.com/

藤原印刷は、1955年に創業者の藤原輝さん(現社長のお母様)が一台のタイプライターで「藤原タイプ社」を始めたところから、1960年代にはオフセット機を導入。現在は出版印刷をメインに組版から印刷まで扱い、東京の営業所と合わせて90名ほどの皆さんが働かれていらっしゃいます。私は商業印刷や後加工の工場へ行く機会は多いのですが、出版印刷を手がけられている現場を見る機会はほとんどなかったため興味津々。伺ってみるとやはり出版に合わせた特徴が随所に見られました。

エントランスを入ってみると、全体に木目調の柔らかな空間。重厚感のある階段や、ところどころにみられる邸宅のような感じは、創業者の輝さんの趣向によるものだそうで、機能性を追求した無機質なものではなく、柔らかい印象です。入口には創業時のタイプライターも。


実際に従業員の方々が働かれている3つのフロアは、それぞれ「組版」「画像処理・校正・製版」「印刷」に分かれています。

まずは組版のフロア。静かです、ちょっと緊張……。ここには組版用のPCが並んでいるため、一見普通のオフィスのようにも見えるのですが、独特な点としては、奥に案内していただくと写研の電算写植機(GRAF)が並んでいます。たぶんこれが出た頃は小学生くらいのはず(と考えるとDTPの歴史なんて若いものですが)。藤原印刷は市史や行政の印刷物、社史などの印刷も手がけられているため、古いデータが入ってくることも多く、まだ現役で使われているそう。もちろん最先端のDTP環境も揃えられており、カバー範囲の広いDTP制作環境になっています。
従業員も若い方が多く、女性比率高め。少しはにかみながらお仕事を見せてくださいました。かわええ……(おっさん視点やめてください)

2階は画像処理と製版のフロア。こちらもすっきりしたフロアですが、大きなスキャナーとCTPプレートセッター(製版機)がどーんと鎮座しています。壁には大きな表で、1階にある印刷機のスペック一覧が貼り出されています。印刷機ごとに特徴があるので、どの機械が適しているのか一目で分かりますね。

さらに藤原印刷の製版機はCTPだけではありません。ダイレクト製版と呼ばれているシルバーマスター(紙版)の製版機があるのですねー。シルバーマスターの製版機、実は見るの初めてです! もう今日の見学最大のポイントはココ!(笑)まずは写真でどうぞ。




ダイレクト製版とは、データから印刷版を作るのではなく、紙に出力した版下を製版カメラで撮影し、それをシルバーマスターという紙ベースの版に直に感光させて作ります。撮影したものがそのまま版になるので、ダイレクト。


↑これが「版」です。ベースが紙(強度を上げたプラスチックベースのものもあります)なので1万部近いような大量印刷には向きませんし、写真の解像度はCTPにはかないませんが、文章を印刷するのにはCTPだと文字のエッジが出すぎてしまうため、レンズを通すダイレクト製版の方が読みやすい場合もあるようです。目で見るのに近い感じですね。こんなカメラで撮影します↓


印刷製版の進化からいくと、ひとむかし前の技術という印象もあるダイレクト製版ですが、シンプルなぶんまだまだ工夫もできそうな魅力が感じられました。

そして2階にはもうひとつ、ガラスで囲まれた静かな空間に校正を担当されている方々が居ます。修正の赤字が反映されているか、出力に間違いがないかを人の目できっちりチェック。この校正のパタパタ(って呼んでますが人それぞれかも)を見るとDTPの会社員時代を思い出したりして……。校正作業って、ページものの象徴的な印象があります。
製版オペレーション、校正という熟練した技術の必要な工程のためか、ベテラン感の漂う方々の多いフロアでした。

最後に、印刷機の並んだ1階へ。大小のオフセット印刷機9台(うちシルバーマスターとオフセット兼用が1台)が稼働しています。オフセット機の組み合わせで特徴的なのは、大型の単色両面印刷機・2色機と、菊半裁のコンパクトな5色機の組み合わせ。つまり「本文用」と「表紙まわり用」ですね。これが商業印刷などパンフレットやペラもの主体の印刷所になると大型のフルカラー機メインでまわしていくのですが、本文が単色やモノクロの書籍を刷るのに効率的な編成になっています。なるほどなるほど。

↑シルバーマスター兼用機


↑古いタイプの小さめの印刷機はインキ量の調整ツマミを人の手で調節します

↑新しいコモリの菊半5色機


印刷機オペレーターの方は20〜30代の若い方が多く、なんだかみんなフットワークが軽い(笑)。版をセッティングしたりパレットを移動させてるだけなのに、微妙にアクロバティックなんですけど、あれ普段からですか?(こらこら)

そんな印刷フロアの片隅には、菊半裁・四六4切用の小さなPP貼りの機械も。定年後採用で働ける場所として最近導入されたそうで、ご高齢の職人さんが元気に立ち仕事をこなされていました。確かに大型の機械は動かすだけでも大変ですものね。

……と、いつにもまして長くなってしまった工場見学レポですが、今回この藤原印刷へ伺ったのは、現社長の息子さんご兄弟に会いに行くためでもありまして。先述した通り、出版印刷の歴史を感じさせる印刷所のこれからを、東京で印刷とはほぼ関係のない企業で働いていた二人が、どのようなかたちで引き継ぎ変化させていくのか。日々試行錯誤されていると思うのですが、同世代なのもあり友人として注目していますし、いずれ一緒にお仕事できるといいなあとも思っています。

二人とも、ご案内ありがとうでした。

↑最後に、オペレーターのみなさま集合写真w