Trackback URI | Comments are closed.
Ishii Collectionのご主人と野口とAK
◇2009.9.20 @ Ishii Collection(南青山*1)◇
ご店主(以下・主):それはね、着物の柄を染めるための型紙なんですよ。和紙にこう、柿渋を塗って。
野口(以下・野):この表面(の深い焦茶)は渋の色ですか?
主:そうそう。和紙に柿渋を塗って、2枚3枚と貼り合わせて、薫製みたいにいぶしてから、さらに3年くらい置いてから使うんですよ。そのとき紙の目の縦横が交差するように重ねると紙が歪まなくなる。そのへんのは江戸時代のものですね。
野:それを手彫りしてるんですよね。細かい……。この小さな穴(1mmくらい)がいっぱい開いてるのはポンチみたいに抜いてるんですか?
主:それは先のカーブした細い彫刻刀をくるっと回して切ってるんですね。ものすごく細かい柄は本当に職人芸だけど、これも量産のために作られた道具だから。さらに着物を染めていくわけだけど、道具つくるまでが一番大変。江戸時代にはシーボルトが何万枚もオランダに持ち帰って、それがドイツやイギリスに渡ってステンシルに取り入れられたりね。
野:今もしっかりした状態で残ってますけど、どのくらい保つものですか。細かい切り込みのところとか、折れそうな気が……。
主:300年くらいとも言われてるけど、そこまでは保たないんじゃないかな(笑。比較的新しいものにはメッシュが貼ってあるけど、江戸時代くらいのものには、ほら、ほそーい糸が通してある。一度切り抜いた型紙を剥がして、間に糸を通してもう一度張り合わせてあるんですよ。
野:おおお、これ、寸分違わず張り合わせるだけでも難しそうですけど。今も彫り師さんっていらっしゃるんですか?
主:いますよ。伝統工芸として残してて、普段は他の仕事したり、カルチャースクールの先生をやってる人も(笑。今は機械で簡単に作れちゃうから、すっかり不要の技術になってしまって。でもこうした型紙を見てると、これだけ沢山の柄が製品として世に出てたのはすごいことですよ。今は柄のパターンもある程度決まってるでしょう。昔は呉服屋好みとか、百貨店好みの柄とかがあって、それぞれに違う品物を扱ってたんですよ。
野:これだけのバリエーションが製品としてつくられてたっていうのは、手作業が生きた時代だからこそなんでしょうね。
AK:こっちに積んであるのは……?
主:そっちも面白いんだよ。1960年くらいからの毎年の流行色の色見本で、服飾の布屋とか問屋が集まって「今年の流行色はこれで」っていうのを毎年みんなで決めてたんですね。今もそういう組織、あるでしょう。で、この見本から着物のデザインを発注したり。
野:業者間で「この色」って決まってから、デザイナーにこの色を使ってデザインしてくれって発注されてたんですか。
主:そう。表に書いてある文章も面白いでしょ。「世界の流行色」とか「ヨーロッパモダンとの融合」とか。このころはあんまり「和」なんて考えていなくて、世界へ出ていく方へ意識が向いていたんだね。今は「和風」の落ち着いた色とか、Tシャツに着物柄が刷られてたりするけど、むしろ今の若い人は、外国人が日本を見るような目で見てるのかも知れない。そっちのは昭和30年頃の見本帳。
野:すごい鮮やかですね。
主:変わった配色だね。昔は天然染料を使ってたけど、化学染料ができたら発色が格段に良くって一気に使われ始めたんですね。これも工業用品だから元はアートでは全然ないんだけれど、切って額に入れたりして「見立て」れば、面白いものになるでしょ。
野:こうしたものはご主人が探してこられるんですか。
主:そうですね。特に芸術として作られたものじゃなくても、安い工芸品として作られたものが、いま見ると面白かったりもするし。一歩間違えればキッチュなものだけれど、その寸前で踏みとどまっているものは結構好きなんですよ。
野:うーん、すごく面白いです。お邪魔しました、また来ますー
test Filed under のぐちまわり | Comment (0)