紙04『紙の耐久性/紙が壊れる』

3月 12th, 2009

今回はちょっと歴史的な話も織り交ぜつつ、紙の耐久性についての話を取り上げたいと思います。

紙といえば、燃える、破れる、ふやける……それほど強い素材ではありません。しかしそれ以上に紙の耐久性で問題になってくるのが、「みずから壊れる」ことなんです。

身近なところでは、黄ばむ(日焼けする)のも劣化の兆候のひとつ。劣化が進んでしまうと、図書館の奥に保管されている100年前の本などには、触れるとぼろぼろに崩れてしまうようなものもあります。
しかし、中国6世紀ごろの巻物は現在も読めるような状態で残っていたりするし、ヨーロッパで活版印刷技術が生まれた1450年頃の書物も存在しています。

これってどういうこと? 製紙技術って進歩しているんじゃないの?
これには紙の原料の歴史が関係しています。紙ができた頃まで遡っていると収拾がつかないので、ここではヨーロッパの紙の歴史から振り返ってみます。

ヨーロッパで製紙業が盛んになり始めたのは13世紀後半。初期はイタリアが最大の供給元となり、徐々に周りの国へと広がっていきました。この頃の紙の原材料は、ほとんどがシャツや肌着の古布。砕いた布を漉き、ゼラチンでコーティングして生産されていました。

しかし回収できる古布もたかが知れているため、大量の原料集めは難しく、紙はまだまだ高級品でした。需要が伸びる紙の材料を確保するため様々な方法が試され、現在のように木からパルプを作って紙を作る技術が生まれたのが19世紀後半ごろ。コーティングにもミョウバンやロジンが使われました。

ただ、木の成分には紙に必要な繊維(セルロース)以外にも多くの不純物が含まれていて、当初の繊維をすりつぶす方法(機械パルプ)では不純物を取り除くのが困難で、紙の質は落ちました。ちなみにこの不純物が、紙が日焼けする原因になっています。
(現在も、上質紙以外にはこの機械パルプが含まれています。)

余談ですが、古布を使っていた時代にも質が一定だったわけではないようで、シャツの繊維が亜麻よりも安い木綿に取って代わると紙の質も落ちていたのだとか。人の生活が紙の質に影響していたと思うと面白いですね。

閑話休題。その後、パルプから不純物を取り除く方法として薬品で不純物を溶かし、セルロースを抽出する方法(化学パルプ)が確立されます。が、実はボロボロに壊れていく紙というのは、この化学パルプ初期のものなんです。この頃の紙は製造時に酸性になってしまうため、その酸が徐々にセルロースの結合を分解してしまって、時間とともに崩れる紙になってしまいます。

この「不純物」と「酸」による劣化がパルプを使った紙の耐久性を疎外していました。とはいえ、技術はやはり進歩していくもので、現在はアルカリや中性のパルプが作られるようになり、半永久的に保存のできる中性紙が普通に流通しています。それもこの数十年の話なんですけどね。未だに「中性紙」とわざわざ明記した紙があるのも、それがいかに難しい技術だったかというのを物語っています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今週のピックアップ紙『しらおい』

前回のSPECIALITIESとは打って変わって、『しらおい』は真白でフツーの、コーティングされていない上質紙です。出力センターの紙見本帳でも最初に出てくるくらい、一般的な印刷用紙。
でも知識編をお読みいただいた皆様はこの紙の凄さをお分かりいただけるはず。

しらおいは日本製紙の紙ですが、その他メーカーの代表的な上質紙には、王子製紙の「OKプリンス上質」、紀州製紙の「紀州上質紙」、中越パルプ工業の「雷鳥上質」、北越製紙の「キンマリSW」などがあります。

逆に注意しないといけないのは、手触りが面白い紙やナチュラルな特殊紙は中質紙(機械パルプの混ざった紙)が多いこと。
また、より高級に思えるコート紙にもベースが中質紙のものがあるということ。

本当に長期間の保存をしなければならない文書や書籍は、上質紙、および上質紙ベースのコート紙をオススメします。


Trackback URI | Comments are closed.