feng feel designと花形装飾活字のお話(後編)

3月 26th, 2009

『feng feel designと花形装飾活字のお話(後編)』
(前編はこちら→ http://yohaku.biz/mmgwp/?p=60)
(feng feel design→ http://www.fengfeeldesign.org/)

__前回に引き続き、feng feel designの阪口さんをゲストにお迎えしてお送りします。__

__ものづくりの立ち位置として、私はどちらかと言えば印刷所に近く、阪口さんは表現側に立っているのかなと思うんですが、変なハナシ、どちらも社会的な危機感に常に寄り添っている気がします。私はデザインがデザイナーの仕事では必ずしもないと思っていて、阪口さんのスタンスはとても面白いと思うんですね。というのも、単純にデザイナーではなくて……って本人に語っていただいた方が良いかな^^;__

あはは(笑)いっそ野口さんが語っても(アカンか……)。
だって、これって語ると、
そのまま花形装飾活字で野口さんにいただいた文章に被っちゃうような気がするんだもん。
(これのことです→ http://yohaku.biz/works/forfengfeel.html)
その時の文章で、
「もっと技術を使ったものづくりの側から、印刷に入ってみてもいいんじゃないか」
ていうのがあったじゃないですか。
一番印象に残ってます。
その前後の話は被っちゃうのでしないとして、
つまり、グラフィックデザイン、もしくはグラフィックデザイナーの存在意義を改めて考えさせられる、
いい文句だと思いました。
そしてこれで違うところがあるとするなら、
野口さんは印刷所に近い側に立っていて、
ボクは表現(グラフィックデザイン)の側って事になるような気がします。

自分も以前は大きめのデザイン事務所に通ってデザインしてみたい願望がありました。
チャンスもあったんですが、
それと同じ時期に、
実家は昔からの小さい文房具店を営んでいるんですが、
バブル崩壊を期に30年くらい赤字が続き倒産寸前のような状況でした。
当時、3つの選択肢がありました。
1つ目はデザイン事務所から声がかかっていた事。
2つ目は友達とずっと活動していたWEBデザイン活動を事業化するという事。
3つ目は実家の文房具店をフォローする事。
さすがに全部やるっちゅう訳にはいかないので、
凄ーく悩みました。
結果、実家の文房具店(後の精光堂文房具店)をフォローする事を選びます。
助けたいと思いました。
単純に。
当時の自分が持ちえる全ての能力を注ぎ込めば、
なんとかなるような気がしました。
なによりもデザインをする場として、
こんなにも自分の力を試せる面白いところは他には無いという事に気付いたのも、
理由の1つです。
要するにデザイン魂に火がついちゃった訳です。
やったろうやんけ! てな具合で。
デザイン事務所にも友達にも悪い事しちゃったし、
収入は鬼のように減りましたが(だって家のお手伝いですから……)、
最高に素晴らしい(思い出すだけで胃が痛い……)日々を過ごす事になったんです。
後日談としては、去年の11月をもってメデタク黒字に転じる事に成功しちゃったりしてます。パチパチ。

__いやもう、それヒトゴトじゃなくて純粋に感動しましたから。「どうにかしたい何か」がある時に、デザインはより強い力になるものだと思うし、そもそもデザインって問題提起とその解決や解答だと思っていて、デザイナーに「なる」のが目的になっちゃうのは少し違うような気がする。__

それは本当にそう思います。
同時にデザインを「する」事が目的になってしまっても違うような気もしますね。

自分のジャッジさえ自分で下せなくなったらデザイナーとして終わりだと思うんですが、
そういうのってデザインする上で凄く重要で、
それが出来てないデザイナーが増えてますよねホント。
お客さん第一主義というか、
クライアントの要望にどんなけ答えてとか、
こんだけ経済的に影響して効果があって結果が出てとか、
社会的に職業的にはガシガシ喋れるのに、
いざデザインの話が出来ないんです。
デザイナーは増えてるのにデザイン下手なヤツも同時に増えてて、
デザインという作業をしているというだけで、
デザインしているという訳じゃないとこが本当に哀しいです。
同時にデザインってものはこうなんだよなんて定義して喋り始めたら終わりだとも思ってます。
いや、青臭いんですが。

グラフィックデザインやってるのに印刷を知らない人が多い事にも危機感があります。
価値が無くなってきているというか。
なんか今って印刷されたものがゴミみたいな扱いされてるじゃないですか。
チラシとか。雑誌とか。パッケージにいたるまで。
ノスタルジーを詠うわけじゃないけれど、哀しくて仕方がない。
昔より絶対にグラフィックデザインは認知されているし、
印刷の技術だって紙の種類だって豊富になってるのに。
きっと皆一生懸命なはずでしょうし、
価値を下げようと思って下げてるはずじゃないのに、
全然歯車があってないようにも感じます。

だからこそ印刷の余白Lab.でメルマガも含めて野口さんのやってる事は、
むしろ変わった事じゃなくて当然にやんなきゃいけない事で、
それに気付いてる数少ない人でもあるように思います。
花形装飾活字でいただいた文章にしても、
読んだ時にこの人は変人だ! 同じ匂いがすると直感で思いましたから(笑)
だって実行に移してるんだもん。

__や、向こう見ずなだけですよー。実はけっこう見てますが(笑)100人やってもしゃあないけど、10人くらいはやんなきゃいけないことってのがあるとは思ってます。__

最初、面白い人見つけた!と(笑)ほんまにワクワクしました。
これからの活動楽しみにしてます。

で、何が今足んないかってのも含めて、
大切なのは共通言語をどんだけ作れていけるかって事だと思うんです。
ホンマに凄いってのは、
例えばなんもないガレージから、
自信だけが取り得の1人のデザインウマイ人が作業をちょこちょこ始めて、
いつの間にか人が集まってきて、
じゃあオレコピー作る、ワタシ写真、ボクイラスト、オイラ印刷みたいな感じで、
集まった人らで、
電通とかライトパブリやサンアドに負けへんくらい、
むしろ彼等にしか作れないものを作っちゃう事なんじゃないかな。
それが地域の新聞折込チラシっていう(笑)
わかりますかねこの感じ。
なんもないとこから凄いって感じ。
1人のバカが始めたバカな事に、
いつの間にか集まってくる感じ。
きっと、その1人の人は具体性と共通言語の構築に長けていたんだと思います。
この場合、一緒にやる人の距離ももちろん大切です。
自分の話で照らし合わせると、
隣に住んでる人となんかやるのが一番理想(実話)。
家族でもいいよね血筋でやるとか結構好き(実話)。

凄いとこに行って凄くなるのも努力せな無理やけど、
優秀なやつらが皆そうしちゃったらダメじゃんてな感じで、
今、一方通行になってて見ているものが同じ過ぎて、
それもホント危機に感じてます。
時々は優秀なバカが居てもいいと思うんだけどなあ……。
つまり、どれだけ共通言語を育むかにかかってるんですね。
気付けば街はカラッポだったんです。
マンションが建って皆バラバラ。
友達とは遊ぶのに、
隣に住んでる人とは会話さえ出来ないでいるみたいな。
隣に住んでる人にデザイン頼まれてみればいいんです。
そのデザインは本当にその人の為になってますか? ってなもんなのです。

考えなければいけないのは共通言語が誰の為のものであるかって事だと思います。
デザイナー自身が本当にその人の為にデザインをしているかどうかは、
その人があなたにとってどういう人なのか、というのが凄く重要なんです。
もちろん、その人にとってあなたはどういう人なのでしょうかという事も含めてです。
まさか、恋愛をまったくタイプじゃない人と繰り広げる訳にはいけませんから。
結婚だって急には無理でやっぱり時間が必要なものです(例外がほとんどか……)。

__あ、私が結婚したのは60歳まで一緒に居てもコイツのことは理解できないって確信したからです(笑)どうでもいいっすね。
それはさておき、阪口さんが精光堂文房具店で出されてる「千代紙な名刺」も、サービスがあること自体がデザインだと思うんですが。
(http://www.seiko-do.net/online_shop/name_card/)__

「千代紙な名刺」の場合は、
あくまでフォローが目的であって、
精光堂文房具店の価値を上げる為に行ないました。
が、そりゃもうチャンスとばかり楽しんでやりましたけど。
印刷とか紙とかホント自由にやっちまいましたから。
こんなのホント今まで無かったと思うんですよね。
大きい声で言いたいです。
オレやったった!! って(笑)
と言っても、これはあんまし書かない方がいいんですが、
あくまでお店の価値を上げる為なので、
単なる演出であって技術のアピールでしかありません。
「千代紙な名刺」を行なう事によって、
なんかいい感じの面白い事やってるお店、
という印象を持って貰うのが目的です。
もちろん商品には絶対の自信があります。
印刷見本はタダで配布してるので、
是非手に取って見てください。
期待は裏切らないと思います。
「千代紙な名刺」の他に「紙屋さん」とか「ゴム印工房」やら「文房具がいっぱい(通販)」やら、
名前を見ればそのままなんですが、
実は地味に他とは違った違う視点でのサービスを展開しています。

けれど小さな文房具屋なんです。
重要な事は小さいお店なので利益が少なくていいという事です。
何百万円も儲けなくても失敗じゃないというのが、
(もともと赤字でしたしね)
それが逆にこれらの活動や準備を容易にしてくれました。

それと実家のお店ですから、
店員が全員家族です。
これが単なる他人なら、
とくに「千代紙な名刺」は実現に至っていなかったことでしょう。
本当に粘り強く最後まで頑張ってくれたと思います。
印刷屋さん、紙問屋さん、文房具屋さん(ていうか実家)。
この3つは昔からずっと繋がってるとこで、
その要素もこれを可能にしたと思います。

印刷屋さんは職人としての腕はいいけれど機材は限られている。
紙問屋は老舗で顔が利くので紙業界に融通(我がまま)は効くけど最新の紙事情に疎い。
印刷屋さんには本当に頑張ってもらいました。
何回、こんなん無理って言われたか……。
あ、あと裁断屋さんも。
ボクがやった事と言えば、
もともとあるものをアレンジしただけです。
仕組みは既に出来上がってましたから。
考え方や可能性を、まさにデザインしただけなんですね。
まさか誰も売れると思って取り組んでなかったと思います。
きっとなんじゃこりゃだったでしょう。
オススメの名刺は100枚が10000円を越えてますので、
これが最初売れた時は正直ビビリましたが。
ほんまに売れんねや! て(笑)
語りつくせぬ感動も同時にありましたが……。

__それでもかなり大変だったのは想像できます。私の仕事はまさしくアレンジをしていくことですが、まあ印刷・製本ってのは驚くほど細分化された世界ですから。根気と人情ないとしんどいです。千代紙な名刺はデザインもすべて阪口さんですよね?__

うん、デザインは全部やりました。
ちなみに絵柄の部分は全て手描きでやってます。
方法は白い紙に黒一色で描き、
それを撮影して紙の版を作っています。
いわゆる紙製版のオフセットって言われてるやつです。
色は一色ずつ話し合いながら決めました。
色の在庫にも制限がありますので、
微妙な調整しながら色指定をしていきます。
版は筆の手描きなので、
2色刷りの場合は微妙に重なったりした時に、
なんかこう濡れた感じになります。
それがまたいいんですよね。
これはコンピュータで作った時には出来ないと思います。
色を乗せる順番でさえも雰囲気が変わってくるので、
気を配った1つです。
図案によって色の重なりも利用して表現しているので、
印刷屋さんには、
乾くまで待たなアカンやん!とかブーブー言われてます。
また位置あわせも単色ずつの刷りで手作業で合わせるので、
ほんまに微妙なんですが予想出来ないズレも発生します。
それは職人さんが丁寧に作業をした結果の1つの技として、
実は2版の場合に、
キチンと合わないようにワザと微妙にズラせてトンボを設定しています。
こんなん印刷屋さんに言うたら凄い怒られます。
版によっては、ベタのサイズが大きいので、
最大で印刷作業だけで14日かかる場合もあります。
紙についても、こだわりは続きます。
ええと何種類だっけかな。
たしか今の10種類くらいに落ち着くまで50種類くらい試しました。
中でも、「ケナフ100GA」は一番だと思います。
雰囲気質感どれをとっても相性がいい紙でした。
あとは「NTラシャ」でしょうか、
独特なインクの定着の仕方をします。個人的には好き。
もちろん他の紙も各々特徴があって全部変わります。
おまけ的な扱いですが樹脂版の活版印刷(この印刷所も小さいとこです)もサポートしているし、
オーダーメイドという形でデータや手描きの原稿を受け付けての印刷も可能で、
千代紙な図案と組み合わせる事も出来ます。
いや、ホント、実際、贅沢な作りやと思いますよ。
お金はかけませんでしたけど、
手間と暇は惜しみなくかけましたから。
もうね、ホント凄いですよね。
紙とインクは本当最高です。
それが大量に刷られるとかホントヤバイです。
しかもたくさんの人の手に渡る前提なんですよ!

__もうね、こういう話すると終わんないですよね(笑)続きはそのうち大阪でやりましょう。最後に、これから阪口さんが、具体的に展開しようとしていることってありますか?__

ほんまですよね、
これ読んでる人はここまで無事に辿りついてるのかな(笑)
うん是非とも、お待ちしてます。おいしいお店案内しまっせ。
展開ですか?
めちゃんこあります。
ありすぎて生きてる内に全部出きるかどうか……。
全部書くのは無理ですが、
ひとまずなところは、
花形装飾活字をまったくのオリジナルで新しいものを作る事を考えています。
その名も「新・花形装飾活字 水草」です(地味に名前初公開)。
まだまだ見せれるようなもんじゃないですが、
いい感じになってます。きっと期待を裏切らないと思います。
順調に進めば今年中になんらかな発表出来るかも。
他には、野口さんのような方を発掘していきます。
まだまだたくさんいるはずなので、
見つけてはちょっかいだそうかなと考えています。

あ、それと、これが多分、今のとこ一番力を注いでます。
「クリエイティブの集う場所」という名目で、
つくる人達が作業出来る場所を今、運営しています。
文化祭の準備の放課後夜遅くみたいなノリです。
一見さんお断りルールなので詳細は書けませんが、
その場所は既に運営を始めて4年目になるのですが、
ボクの知り合いだけで構成されていて、
その分野は本当に多岐に渡っています。
けど詳細は書けません。すいません。
ただ、
例のガレージの発展版を実践している場所だと考えていただければいいかと思います。
いろんな化学変化が起こっていて、
そこで生まれてくる事を近々発表していく事になります。
今のとこ、お伝えできるのはこんな感じです。

__ありがとうございました。
花形装飾活字も印刷技術も、伝統や懐古的な意味ではなく、表現のベースとしてまだまだ生きていくものだし、変化しながら広がっていく可能性はあると思っています。そんなことをぬけぬけと言う奴が居てもいいんじゃないかと信じて漂流する身としては、阪口さんは本当に灯台というか、心強い存在で。実はお互いにイカダで懐中電灯ふってるだけなんだけど(笑)
こうした繋がりが増えていけば良いなあと思っています。__


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